シャープさんさんの作品:私はなにかを好きな人が好きだ。推しを抱く人の言葉の話。

私はなにかを好きな人が好きだ。推しを抱く人の言葉の話。

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自分の体重を直視できますか、 @SHARP_JP です。運動とか体型とか筋肉とか、日頃はフィジカルとは無縁な私のTLでも、お正月が明けると、太った、体重が、ダイエットを、といったワードが目につきます。たぶんこの時期と半袖解禁の季節が、自分のフォルムや自分にかかる重力について、向き合わざるをえないタイミングなんでしょうね。


私はそもそも自分の身体を信用していないというか、どちらかというと脳の方を信用する、過度にファンタジー寄りの人間だと思うので、ダイエットという行為には縁がない。縁がないと言っても、身体を直視しないだけで、ダイエットや運動をした方がよろしいのではという事実は、現実に横たわったままである。見ないだけで、現実はいつも厳しい。だからまた脳へ逃げ込む。内向きの円環の完成だ。


そしてこういう、脳に映るビジョンを優先する生き方は、一般に言うオタク的な生き方と相性がいい。言い換えると、推しと生きるために最適化された体質といえば、どなたか共感してもらえるだろうか。




できる!妄想ダイエット(珠虫さとり 著)




たぶん作者さんも、推し体質の方なのでしょう。「ノー推し、ノーライフ」な人物が、日常生活における、安易なダイエット法に警鐘を鳴らす。そして推しによるダイエットハックが真剣に語られる。その真剣さが最終的にタニタさんへの叫びになるくだりに、笑いを堪えることができない。


ですがその叫びはタニタさんに任せることにして、この作品で私が推したいのは、各コマで繰り出される熱いパンチラインの数々です。パンチラインというのはヒップホップの用語で、曲のラップの中でいちばん印象的なフレーズのことを言います。


「オタクの妄想力をなめてはいけない」「推しは同時に生命力の燃料ともなる」「テンション天元突破」「自分は主人公と共に選ばれし者と思い込み」「さそり座の女は倒した」「自分でも驚くほどの腹筋からくるロングトーン」「こんな残酷なダイエットがあってたまるか」


ここに書き起こすだけでなんて魅力的な字面。私がコピーライターなら教えを請いたいくらいだ。教えを請うても、推しの尊さを力説されるだけだろうけど。それにしても、推しを抱えた人たちが選ぶ言葉は、なぜいつも魅力的なのだろう。


容易に思い浮かぶのは、ツイッターの影響でしょうか。ただその点においても、限られた文字数ゆえに文意や表現が濃縮されるというより、むしろいくつものツイートを重ねて記述していく、発言数の自由さやフォロワーとの関係性が関わっているような気がする。たぶん私が魅力に感じるのは、熱烈に推しを抱いた自己を肯定しつつ、それでもなおもう一度、徹底的に自己を客観視して語ろうとする意思、知性なのかもしれない。それは人類がそれぞれの推しを普及するため民主的に作り上げられた、一種の文化的マナーともいえるのでは。知らんけど。


いずれにしろ、私はなにかを強烈に好きな人が好きだ。そして、なにかを強烈に好きな自分と、その自分を客観的に眺める自分を同時に抱えながら、好きを穏やかに、時には自虐を交えて語ろうとする人が、私は好きなんだと思う。この作者さんのような作品を、マンガでもテキストでも、私はいつまでも享受したい。好きの熱量が冷静さと配慮をもって伝わる世界、素敵だと思いませんか。

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ラリー元
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