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シャープさんさんの作品:仕事も意味も納まらない。クソリプがマンガになった瞬間を見た話。

年の瀬ですね、 @SHARP_JP です。みなさんの師は走ってますか。仕事納めとか軽々しく言うなと、苛立ちを覚える程度には私も追い詰められています。世間も会社も「納まるか納まらないかはあなた次第」みたいな顔をしますが、たいていの仕事なんて、自分の判断で片付けられたら苦労しない。仕事が納まるか納まらないかは、いつも相手次第だ。


仕事でも、生活でも、なんならツイッターでも。上司や取引先、恋人や友人知人、フォロワーと、私たちのアクションの向こう側には決まって相手がいる。そして時には「ああ、この人とはどうやら話が通じないぞ」というような相手に出くわすこと、ありませんか。


話が通じないと言っても、交わす言語や文法が異なるわけでもなく、むしろ会話のキャッチボールはできるものの、ラリーすればするほど、相手の真意が底抜けになる感覚。第三者がそのキャッチボールを眺める限り、破綻はないように見えるが、ひたすらボールを受けては返す当事者は、相手から投げかけられるあいさつも、返されるツッコミも、切り出される話題も、どこかいびつで違和感が溜まる一方。進めば進むほど会話は上滑り、相手への理解が1ミリも深まらない。そんな感じ。


そういう、文意はかろうじて破綻してはいないものの、おそろしく的を得ない指摘を繰り返すコミュニケーション、あれはいったいなんなのだろう。

干支面接(小山コータロー 著)


またヤバいマンガがやってきた。私が言う、おそろしく上滑りして的を得ない会話が、まさにここで行われているやりとりだ。干支の新メンバー募集と聞いてやってきた小林。人間だ。質問に小林はさわやかに答える。面接者である辰の意見に、流れるように逆提案する小林。ついには猿の面接官へ、面接される側なのに質問を許可する小林。あげく、錚々たる干支のメンバーに根源的なツッコミを入れる小林。人間だ。


小林はヤバい。妙に好青年な外見に、明るい表情を崩さない。だが明らかに彼の会話は、面接を1ミリも進めない。終わりが見えない面接。帰ろうとしない小林。なにが恐ろしいかって、面接者の発言→小林の回答、それを2コマずつ切り取れば、それなりにコミュニケーションがボケとツッコミというかたちで成立しているのだ。だがこれを冒頭から一連の16コマで見ると、会話は最初から最後まで上滑りしている。


私はここで既視感を覚える。この上滑り、FF外から失礼します、ではじまるツイッターのあれだ。私がいつもリプ欄で直面するやつ。いわゆるクソリプが繰り広げるツイッターのスレッドをマンガ化したら、まさにこの作品になるんじゃないか。かろうじて意味が通うボケとツッコミは成立しつつも、ぬぐいようのない不穏な空気をまとう会話。これだ。この感じ。違和感コメディクリエイター 小山コータローさんは、とうとうクソリプの空気感をマンガ化するのに成功したのだ。


そしてなぜか私は、この不穏な感じが嫌いではない。クソリプに遭遇するたびに私は、いつも少し、わくわくしてしまう。その理由はうまく説明できないのだけど、意味と無意味がゆらゆらする危うい開放感に、私は自由を感じているのかもしれない。


さあ、きょうも私のツイートのどこかで、クソリプの応酬が繰り広げられる。みなさん、よいお年を。来年の干支は亥ですね。


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