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末次 由紀(すえつぐゆき)さんの作品:「時間」の話
コロナ禍で世界中の活動が止まっていた今年の5月。

ちはやふる基金でカレンダーを作らない?という話になりました。

(わたしは漫画家をしながら、ちはやふる基金という社団法人の理事もしています)

支援予定だった大きな競技かるたの大会も軒並み中止になってしまい、選手のみなさんほどではなくても、自分自身も少なからず落ち込んでいました。

今年の選手みなさんの無念をどう受け止めたら…

考えても考えても消化できないやりきれなさを感じていました。


わたしは10代の親戚や友人に何かをプレゼントするとき、時計をあげることが多いです。

「時間を大事にしてね」

そう言っていつも似合う時計を買って渡していました。


今流れていく1秒1秒は、絶対に戻ってこないかけがえのないもの。

そう知っているのと知らないでいるのとは、届く地平が違うと感じるのです。


その大事な時間のどれくらいが、今年の人類の「どうしたらいいの」という右往左往で消えていったか。

積み重ねた努力と準備が無になっていく……そんな無力感に襲われた人も多いのではないかと思います。


そんなときに「カレンダーを作りません?」という話。


カレンダーは言うまでもなく未来があることを示すものです。

今年で燃え尽きる予定だった、でもそれがなくなった…そんな人にも来年は来るし、来年は来年の春夏秋冬が来るのです。


来年のカレンダーを思い浮かべると、書き込みたいものがたくさん出てきます。まず大事な人の誕生日。自分にとって大事な記念日。長期休暇の有無もチェックしたくなります。

動きがちな祝日はどうなってる?

来年の高校選手権はどの辺だろう?


ああ、カレンダーって時間のはしごなんだな、と思いました。

登っていく1日1日が見えるのです。

奪われたのは機会であり時間ではなかった。時間はいつもそばにいて、成長か休息のために平等でいてくれたのだ、と。


「白黒のイラスト6枚あれば、カレンダー作れます」


そうかあ、がんばろうかな。


描きました。まず新、すみれ、太一、かなちゃん、しのぶ、千早。

ああでも全然だめ。絶対ダメ。12ヶ月全部いる。みんなに選んでもらえるカレンダーになりたいのに、省力するわけにいかない。

12ヶ月全部描こう。カラーで描こう。毎月添える百人一首の一首一首と、ちはやふるのみんながそばにいることを喜んでもらえるような、そんな絵を書こう。


連載の原稿を書く間の、家族と過ごす間の、10分、15分、そんな小さな時間をかき集めて、12枚イラストを描きました。


表紙もいいものにしたい。リラックスした一年のスタートに、ほっこりしてもらいたい。

誰も書けと言わないのに、ちはやふるの8人がみんな「好きなものに包まれる」様子のカレンダーの表紙を描きました。


わたしは漫画を書くことと、絵を描くことしかできない。

その力をどれだけでも使う。そのために、何より大事な時間を使う。

カレンダーに書き込む「予定」のその他の、書き込まない日は全て、わたしは絵と漫画に使います。


そんな風な思いを込めて2021年のカレンダーを作りました。

みなさんのそばに365日置かれるカレンダーになることを願っています。

そして来年のカレンダーに、たくさん競技かるたの大会の予定が書き込まれますように。


2021年チャリティー描き下ろしカレンダー特設ページ

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