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東西サキさんの作品:【2020年8月】"漫画ソムリエ"東西サキ先生のピックアップ新連載

皆さんこんにちは、漫画ソムリエの東西サキ(@tozai69)です。

普段は、東京ネームタンクでマンガの【持ち込み先・進路相談】をしたり、マンガの技術や情報を交換し合うマンガ技術研究会というところで活動したりしています。


そのマンガ技術研究会の活動のひとつとして、時代感に追いつくために「常に最新の新連載をチェックする」というものがあります。


このコラムでは、毎月さまざまな雑誌やサイトで始まる何十作もの新連載の中から、特に皆さんに注目していただきたい作品をご紹介します。

「この作品がなぜ今始まったのか?」「どういったところがその作品の魅力なのか?」という視点から新連載を解説していきたいと思いますので、ぜひそれぞれの作品をチェックしてみてくださいね。



怪獣8号 / 松本直也

連載:少年ジャンプ+


「ダメな大人がかつて憧れた場所を再び目指す」というところを軸にして、ちょっと疲れた大人である主人公が這い上がっていくサクセスストーリーに変身ヒーローものの要素を足したようなSF作品です。

作中で怪獣を倒した後に遺体処理の描写や主人公のボヤキがあることで、SF的世界観でも読者が気持ちを重ねやすくなっているところに魅力を感じました。

SFに日常描写を入れると読者の共感度が高まりますが、ただなんとなく入れるのではなく、本作のように「我々が見知った光景を意識してSF的世界観に入れる」ことが重要です。

『パトレイバー』などに見られる一昔前のSF的リアリティ描写は、映画『パシフィック・リム』や『シン・ゴジラ』が登場するまで姿を消していたと思うのですが、最近になってまたこういった表現を持つ作品が出てきていますね。

SF的世界観にリアリティ描写を入れていくのはトレンドなのでしょうか。むしろ、いまの読者にはこういったリアリティの見せ方が新鮮に感じられるのかもしれません。



奈落のふたり / 五郎丸えみ

連載:コミックDAYS


クラスの最底辺にいるいじめられっ子ヒロインと、事なかれ主義の男子高校生である主人公が退廃的な関係性になっていくラブサスペンス作品です。

主人公たちをあえて読者の共感から程遠い人物として描写することで退廃的な関係への興味を持たせ、重めのサスペンスをストレスなく読ませる工夫がされていると感じました。

閉塞感を感じている少年少女にかなり刺さる作品だと思います。



鉄輪のカゲ・ルイ / 原作:ANIMA/江藤俊司 作画:井上菜摘

連載:ebookjapan


「日本」がまだひとつの国ではなかった時代を舞台とした、伝奇バディアクション作品です。

本作はナンバーナインがアニメーションスタジオ・アニマとタッグを組んで制作していて、今後のメディアミックス展開も予想されます。

設定は複雑なものの、キャラクターの掛け合いとアクションで読ませてくれます。

主人公が2人1組で活躍するバディ作品ですが、第1話ではメインキャラ2人が対立します。そこに第三勢力をぶつけることで、なし崩し的に共闘させる見せ方が上手いなと感じました。

特撮や『機動戦士Zガンダム』などでも使われたテクニックですね。


社畜ねこ / 清水幸詩郎

連載:COMICポラリス

自由と可愛いの代名詞的動物・ネコ。このネコをサラリーマンとして描き、現代人の抱える悩みや心の叫びを描いた物語です。

読み切りが好評を博し連載化した作品のようなので、多くの読者の共感を呼んだのでしょう。

ハイライトのない真っ黒にぬりつぶされたネコの瞳には、現代サラリーマンの日々押し殺している絶望や不憫さが表現されているのですが、同時にそこがネコのかわいさにつながってるのが本作の魅力だと言えます。 

もともと「不憫」と「愛らしい」はどちらも「かわいそう」の語で表現していたらしいので、本作品の「かわいい+かわいそう=かわいいそう」は実は王道なのではないでしょうか。



気になる新連載はあったでしょうか?どれも今後の展開が楽しみな連載ばかりですので、ぜひチェックしてみてくださいね!

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2020/8/3 #コラム
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