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シャープさんさんの作品:いるべき場所

動物が好きです、@SHARP_JP です。人間より好きかもしれない。カミングアウトというと大げさかもしれないけど、背景に自分の危険な深層心理とか人格的欠陥が隠れているかもしれなくて、言うのを控えていたことがある。なぜか私はむかしから、動物の脱走ニュースへ異常に興奮を覚えるのだ。


里山からイノシシやクマが下りてきた。住宅地にニホンザルが現れ、大捕物が繰り広げられた。河川にひょっこりアザラシが姿を現すとか、つい最近では動物園からサーバルキャットが脱走したというニュースもよかった。興奮した。


なかでも私がよく覚えているのは、新幹線内でなにか珍しいヘビが逃げ出したという事件だ。ちょうど新幹線に乗っている時にニュースを知ったこともあり、私が座る席の脇からヘビが飛び出してくるのではとキョロキョロし、ヘビを探してみようと、別の車両まで足を運んだりしたものだ。あれ以来、新幹線に乗るとヘビが車内のどこかに潜んでいる妄想をしてしまう。それにしても、どことなくフェティッシュな香りのするニュースである。


この話、続けてだいじょうぶだろうか。


たぶん私はシュールレアリスムの絵のように、いるはずのない場所にいるはずのないものがいる光景にわくわくしてしまうのだろう。いるはずのないものが好きな動物であればなおさら、私は心が動かされてしまう。いるはずのない場所で、いるはずのない動物に、私は遭遇したい。そういう欲望を、私は抱えている。


欲望と書いてしまうと、なおさら自身に心理的な問題がありそうな気もしてくるけれど、私の日常にいるはずのない動物が出現するという妄想は、とにかく好きな妄想のひとつなのだ。


はとえん 第1羽(斉藤的作 著)

遭遇するはずのない動物に会える場所といえば、動物園である。ご多分に洩れず、私も動物園が好きだ。ただし動物園の動物は、私が動物園へ見に行くわけだから、正確に言うとばったり出くわす遭遇ではない。また幼い頃から動物園を訪れてきたわれわれにとっては、キリンやゾウやライオンも、動物園にいるであろう動物である。トラもコアラもカンガルーも、いるはずのない場所にいる動物ではない。


むしろ動物園にいるはずのない動物は、このマンガのようにハトの方ではないか。ハトは圧倒的にどこにでもいる。だからこそどこにでもいる動物は、動物園でいるはずのない動物に反転する。マンガで描かれる、ゴリラのご飯をつつくハトなんてこの上もなくシュールな光景だ。


ところで私もこのマンガと似た光景が見られる場所を知っている。大阪の天王寺動物園だ。天王寺動物園のアザラシが暮らすプールには、アオサギが佇んでいる。アオサギは巨大な鳥だけど、池や川など、私たちの日常でよく見かける鳥。そのアオサギがアザラシの餌の分け前を得て定住したのだろう、天王寺動物園にはアオサギのまわりをアザラシがくるくる泳ぐ、不思議な景色があるのだ。それは、いるはずのない場所でいるはずのない動物たちが共存する、私の好きな光景でもある。

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