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コミチ代表マンディさんの作品:第10回コミチ漫画賞「#関係性」結果発表!

第10回コミチ漫画賞の総評を書かせていただきます、コミチ代表のマンディ(@daisakku)です。スペイン風邪以来100年ぶりのパンデミック、新型コロナウィルスにより、働き方・余暇の楽しみ方など時代が大きく変わっています。そういう時代の変化が起こっている今だからこそ、縦スクマンガによってデジタル体験を向上させ、新しいマンガ体験を追求していきたいと日々模索しています。


いつも投稿やコメントをしてくださるみなさまと、この危機を乗り越え、新しい未来を創れたら嬉しいです。


さて、今回のコミチ漫画賞は、コミチへの投稿92作品、Twitter応募2作品の合計94作品が集まりました。投稿くださった漫画家のみなさま、本当にありがとうございます!


今回の大賞は初の決選投票が行われるほどの激戦で、コミティアやコミケで出せなかったであろう力作揃いでした。そんな激戦を勝ち抜いたいぬパパさんはコミチの初期から投稿してくださっている漫画家さんで、僕もすごく嬉しかったです。ぜひ審査員のお三方の寸評とともに縦スクマンガをご堪能下さい。


それでは、審査員のしーげるさん・シャープさん・たらればさんの寸評です!



大賞&縦スク賞

あこがれ魔法少女☆デンジャラスデンジャー(いぬパパ)



シャープさん(@SHARP_JP

グイグイ読んでしまった(縦スクだから下へ下へと)実は今回のコミチ漫画賞は、読みごたえのある作品がひしめき、票が割れまくりました。この回に限っては、3位まで公開してもいいのではと思うくらい。で私は悩んだ末に、こちらを大賞に推しました。絵も物語のスピードに並走するように魅力的でした。


ヒーローに憧れる幼い少女。かばいかばわれる幼馴染。地球に侵入する善と悪。ひとつしかない力への葛藤。意に沿わない変身姿。力をあわせる友情パワー。ふたりだけの秘密。


ここで息つく間もなく繰り出される展開は、それぞれひとつずつ見ると既視感のある設定だ。ベタだと言ってもいいと思う。だがそれが緩急組み合わされ、クリアな絵で描きこまれたとたん、少なくとも私には、見事に未知な作品として、目の前に現れた。


それはサンプリングと高度なプロダクションによって、聴いたことがあるようでまったく新しいヒップホップやブレイクビーツを聴く体験に似ている。The Avalanchesの音楽みたい。お見事でした。



たらればさん(@tarareba722

今回のコミチ漫画賞はいきなり投稿作品全体のクオリティが上がっていて、選考に時間がかかりました(「大賞」については審査員のあいだで表が割れて決戦投票となったほどです)。外出自粛期間にGWがあったことや、前回のゲスト審査員であるおかざき真里先生の求心力、中止となったコミケやコミティアへの出品作品が集まっのかなどなど、さまざまな要因が考えられるのですが、ともかく嬉しい悲鳴でした。


ちなみに私は、本作と遠藤平介さんの『トリックスターが笑った』とヤチナツさん『男の部屋』とで悩みまくったのですが、残念ながら票が足りませんでした。無念。遠藤さんヤチナツさんにはぜひまたご応募いただきたいです。


さておき、そんな接戦のなかで大賞および縦スク賞に輝いたのは、コミチ漫画賞に何度も候補に上がっていた、いぬパパさんの作品です。これまでの作品は、よく出来てはいたんですが(特に絵のクオリティは非常に高かった)シナリオに「ねばり」がなく、起承転結の作り込みが浅い印象がありました。

しかし本作はしっかりと起承転結が付けられていて、一編の物語として仕上がっていました。おみごと。「縦スクマンガ」としての完成度も高く、各コマの躍動感や「コマ間」の使い方など、技術的な練度も高かったです。


一点注文を付けるなら、凶悪宇宙人側の動機や事情をもう少し描いてほしかったなという点があります。星を食べたいなら、わざわざ(警察組織が監視する)地球に来なくてもよかったのではないでしょうか。何か、たとえば「宇宙警察」と拮抗する組織の目的があるだとか、あるいは「人間」そのものが必要な事情があるとか、そういう話があると、コメディ作品のなかにも「深み」が出てくるのではないでしょうか。



しーげるさん(@henshu_shigel

縦スクロール漫画って気持ちいい! そんな快感を味わえるスピード感とエンタメ感にあふれた快作で、評を読んでる暇があったら何度も漫画を読んでほしいと思う漫画でした。


子供の頃から憧れのヒロインキャラになれると本気で思い続けていることを隠さない主人公と、実は主人公への思いも含めて憧れを秘めたままでいた友人。その二人が、ついに、まさか、夢が実現する時になって、お互いを出しぬこうとしたり奪い合ったり張り合ったり、コミカルなやりとりがとっても楽しい。


コメディのテンポが縦スクロールに合っているのに加えて、アクションや決めポーズ、大技などのスピード感も縦ならではで気持ちいいし、時折挟まれる回想やモノローグが緩急を作り出しているのもうまい。縦スク漫画って面白いなあと存分に思わせてくれました。


あえて言えば、ちゃんと一つピンチを作って二人が危機を実感する所もあった方がさらに引き立ったかなと思いますが、このコンビ、いやトリオ、また読みたいので次を楽しみにしてます。



新人賞

blue moon(BAD TUNING)


シャープさん

ほんとうに新人さんなのでしょうか。絵もストーリーも、そして挟み込まれるモノローグも、ずっと不穏な空気を発しており、息を詰めるように読んでしまった。


後悔と覚悟、そして幽かな揺らぎが描かれ、読後も複雑な感情が続く。それを余韻というのはかんたんだけど、そういう言葉で片付けるのを許さない、重さが読むわれわれに付加されてしまう、力のある作品だと思います。



たらればさん

先述のとおり、今回のコミチ漫画賞はえらいハイレベルで、新人賞も非常に迷いました。個人的には受賞作の『blue moon』と影ふみ子さんの『わたしのクラヤミ』とで2日くらい頭を抱えて悩みました。


受賞おめでとうございます(影ふみ子さん次回作期待しております)。


非常に美しい絵で描かれる作品のテーマが「自責」というところが特によかったです。完成度も高く、何も足さず、何も引かなくてよい作品でした。2人で並んで見た夕陽と、ひとり絶望に打ちひしがれていた夜空に浮かぶ月の対比がとても美しかったです。


この絵とこの構成を作れるのであれば、ぜひ中編、長編にもチャレンジしていただきたいと思います。中村珍先生の『羣青』などが参考になるのではないでしょうか。



しーげるさん

重厚なタッチで横長のコマを多用してることもあり、まるで映画を観てるような気分になる作品。こういう描き方もありなんだとびっくりしました。遠近や光の使い方もうまくて、現在の重く辛い感情も、過去の美しい時間も表現できているのがすごい。現在の冬の街と、過去の初夏の海という対比も効いている。絵や画面構成にはすでに相当な力量を感じるので「新人賞」という言葉が似合わないくらいです。


お話の方は、過去の悲劇を悔やむ主人公がずっと正体を隠して寄り添っていくという切ないストーリーなのですが、果たしてずっとこのままでいられるのか。そもそも責任を一人で背負い込むべきなのか。ほぼ過去のエピソードで語っているのですが、関係が変わらざるを得ない何かが起きるか、あるいは一筋の光明が差し込むかなどで、現在の関係性についてもう一歩先に踏み込んで描いてほしかったなと思います。


力量はとても感じるので、これからをとても楽しみにしてます。



***



コミチは、『マンガのデジタル・トランスフォーメーション(DX)』のミッションの元、マンガの体験を良くして、新時代の漫画家の皆様のプロデュースを全力で支援していきたいと考えています。ぜひ一緒に新時代のマンガ・フォーマット”縦スク”で、新時代を切り開いていけたら嬉しいです。


そして、次回の#第11回コミチ漫画賞は、

 お題:#主人公のキャラ

 募集期間:2020年7月6日〜7月12日

です。


コミチでは、WEB時代ならではの縦スクロールマンガをお待ちしています!

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