見えないは怖い

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シャープさんさんの作品:見えないは怖い


みんな、落ち着いていますか、心が張り詰めてないですか、@SHARP_JPです。ウイルス禍に見舞われるいま、あらためて言うまでもないことだけど、目に見えない事実が漂う現実は、人をほとほと不安にさせる。ネットやスマホが発達して、見えなかった世界や、見えるなんて想像もしなかった人たちと、私たちは出会い、繋がることができるようになった。世界は縮まり、人は拡張した。われわれはついに、見えないモノを見る視力が向上したとさえ、いえるかもしれない。


見えなかった世界や社会、見えなかった人の生活や思想を、私たちはニュースとして、ツイートとして、インスタの投稿として、スマホ越しに垣間見る。見えなかったものを、テキストや写真や映像として、見るのだ。「行って見る」ということが限りなく困難になったいま、「文字や画で見る」とか「スマホで見る」ことが、理解や想像という行為において、これからも比重が増していくのだろう。われわれはどこまでいっても、見えなければ理解したり想像したりできないわけで、どうにかこうにか見る術を生み出そうとするのが、人類の欲望なのだろう。


だからやっぱり、見えないモノは怖い。見えないかぎり、いつまでも畏怖の対象だ。もはやスマホを使っても見えなければ、いっそう恐怖を感じる。宇宙や深海ですらどんどん見えるようになる時代、ウイルスという小さすぎて見えないくせに、周囲へなんらかの作用を及ぼす存在に、為すすべもなくおののく現実を、いま私もあなたも痛感している。


ただし私たちはひとつ、目に見えないのに作用を及ぼす存在を昔から知っている。見えないのに、影響するモノ。自分の体臭だ。ひとたび周囲の臭覚を刺激すれば、その実体がありありと見えてくる体臭。一方で、本人がその臭いに気づきにくいということが、「ひょっとしたら私は臭いのではないか」と恐怖を掻き立ててきた、悩ましい存在。


リフレアで目指せめちゃモテOL(テンピボシ・ヨシダ著)


その恐怖とはつまり、ここで描かれるようなことだ。モテないのはすべて体臭のせい、あるいは体臭の強い人は恋愛から排除されるという言い切りには、さすがに私も乱暴だとは思うけど、体臭が周囲と自分に悪影響を及ぼすのは間違いない。そして多くの場合、他人から指摘されないと自分の臭いに気づけないことが、悩みに拍車をかけてきた。体臭は見えないのに、人間に作用を及ぼす。社会がマナーや衛生観念を研ぎ澄ましていくことに比例して、自らの体臭への恐怖は増大してきたはずだ。


だからこそ、ここで描かれているような製品が作られたり、改良が重ねられたりするのだろう。ボケ倒す「脇ヤバ美」と、自分の容姿には脇目もふらずツッコミ倒す「モテ子さん」による漫才のようなやりとりを通して、製品の効能が描かれる。広告マンガとはいえ、随所で笑ってしまう。が、ここで私がクスリと笑う時、その笑いの裏腹にあるのはきっと、私が抱える「見えないモノへの恐怖」だ。


このマンガを読む限り、どうやら見えない体臭に、効果てきめんな製品があるらしい。その恐怖を的確に解消してくれる武器が、ドラッグストアでかんたんに手に入る。そうしてマンガのオチを妙にほっとしながら読めるのは、いまやわれわれは、もっと巨大な「見えない敵」という恐怖に直面しているからだろう。


見えないモノは怖い。ほんとうに怖い。

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