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コミチさんの作品:第7回コミチ漫画賞「主人公のキャラ」結果発表!

 2020年オリンピックイヤーである今年、最初のコミチ漫画賞の結果発表です。最近気が狂ったように仕事に邁進しておりますコミチ代表のマンディ@daisakkuです。仕事があることはいいことですね。


 第7回コミチ漫画賞は、計87作品が集まりました。投稿頂いた漫画家の皆様、本当にありがとうございます!

 

 今回から4点変更がありました。(1)Twitter投稿可、(2)縦スク賞新設、(3)サイト上にコミチ漫画賞枠を新設、(4)大ヒット編集者しーげるさんに審査員として参加していただく。その効果のお陰で、すごく力作ぞろいで選考は難航しました。

 

 僕らコミチが目指すのは、ネット時代のマンガメディア。そう考えた時に、WEBで読みやすく、1話完結で、作家の”萌え”に引き込まれ、読者としてドキッとするような作品が重要になってきます。

 今回選ばれた作品は、正に、縦スクで読みやすく、その世界観に引き込まれ、魅力的なキャラクターが登場する作品です。

 是非一緒に新時代のマンガ・フォーマット”縦スク”で、新時代を切り開いていけたら嬉しいです。僕らコミチは新時代の漫画家の皆様のプロデュースを全力で応援します。


 それでは、審査員のしーげるさん・シャープさん・たらればさんの寸評です。



<大賞&縦スク賞>

大賞:眠れないオオカミ3(したら領)

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(シャープさん @SHARP_JP コメント)

なにより絵の表情に魅力がありました。絵本のようなというと月並みですが、主人公オオカミも、ハチらしき飛ぶ虫も、どこか不思議な顔を持ち、夢の中のような感覚に陥ります。絵本のようなと書きましたが、縦スクロールによる静かなページ構成も、絵本をひとり黙々と読む行為に近いのかもしれません。


また、オオカミは冒頭の回想シーン以外は一言もしゃべらず、それがよりいっそうオオカミの、愛する相手を失った喪失感と優しさと少しの凡庸さを饒舌に表現している。オオカミだけど、私は彼と友だちになりたい。


ところで冒頭に、オオカミが過去に懐かしい花として教えられた、サボテンの花が描かれます。サボテンを育てている人はわかると思いますが、サボテンの花はめったに見られるものではありません。1年のうちでもわずかな時間に咲くサボテンの花は、遭遇した時のうれしさや美しさがひとしおです。そんなサボテンの花が、彼の大切な花として回想される。その冒頭は何回も見返したくなるほど儚くて美しいものでした。続きをゆっくりと読みたい作品です。


(たらればさん@tarareba722コメント)

 本作、並みいる応募作のなかでもかなり突出した出来栄えで、今回の大賞選考は非常に楽でした。それほど力のある作品です。

「3」とあるように、1話と2話がすでに公開されています。大胆なタッチと色づかい、かなり思い切ったキャラクター設定と、やや謎めいた過去が非常に魅力的な作品となっています。

 主人公のオオカミは、荒野に立ち尽くしているわけですが、この「なぜ立ち尽くし、おまけに眠れないのか」という説明がいっさいなく、またオオカミの表情が悲観的に見えないところが、本作のミステリアスな雰囲気を加速させています。

 独特なセリフ回しが印象的で、ハチの「過去を今で埋めるんだ」という言葉は、多くの人の心を波立たせるのではないでしょうか。過去は、「今」次第で埋めたり(解釈を)変えたりすることができるんですよね。それはきっと、「忘れる」や「気にならなくなる」ということよりも、よほど素敵な心の作用なのだと思います。

 カメラアングル(コマの構図)の使い方も非常に上手くて、上からの視点と下からの視点を織り交ぜることでハチとオオカミの対話に「動き」を出していました。

 これからどうなるのか非常に気になる展開です。ニーナはなぜ居なくなってしまったのか。オオカミはなぜ動けないのか。ハチの持ってきた花は咲くのか。咲くとどうなるのか。じっくり時間をかけても構わないので、ぜひ「大きな物語」を意識して描き続けてほしいなと思います。


(しーげるさん @henshu_shigelコメント)

大切な存在を喪って動けなくなってしまった主人公。寝ることも動くこともできない彼の姿は気の毒だけれども、そんな彼を世界が優しく包んでいるように見える描写が素敵です。過去、夜、そして夜明けと。次々に移り変わる色の変化が美しい。画面を所狭しと動き回る蜂(?)の描き方にも目の喜びを感じさせてもらいました。主人公は話さず動けずなのに、色とカメラアングルとを巧みに使うことで世界の広がりと彼の意思の変化を表現しているのが魅力的。上から下への時制が強い縦スクロールの特徴もうまく使ってると思います。物語は、希望の種を手に入れて、これからさらにどんな変化が訪れるのか。かつて聞いた「花の丘」を暗示しつつ、一体何が描かれていくのか先がとても気になります。続きを楽しみにしています。



<新人賞>

新人賞:求愛される彼は今日もすきを伝えられない(mafarl)

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(シャープさん @SHARP_JP コメント)

今回のコミチ漫画賞のテーマは、主人公のキャラ。こういった投稿による賞では単発の小品を応募せざるをえないから、漫画家さんは短い時間で(というよりほぼ第一印象で)読む人にキャラの魅力を伝えないといけないわけで、たいへんな苦労をされると思います。


現実の私たちは、ゆっくり時間をかけて付きあううちにその人の魅力に気づくなんてことはよくあることですけど、漫画をはじめ、音楽でも映画でも、時間と空間の制約を受ける表現は「だんだん好きになる」という効果を狙う機会はなかなかない。繰り返し聴いたり観たりしてもらえるとか、長期の連載をあらかじめ保証されるとか、受け手との時間を確保する前提が与えられる作り手など、ほんとうに一握りの存在でしょう。


そう考えると、この新人賞の作品における「動物に異常になつかれる男の子」というキャプションとともに登場する主人公は、そうとういい線行っていると思います。戸惑いながら動物に囲まれる男の子が気になったとたん、そこから続く、片思いの女の子との微妙な距離感も魅力的に映ります。


(たらればさん @tarareba722 コメント)

 これは犬を飼ったことがある人ならだいたい首肯してくれると思うのですが、犬は人間よりも人間のことが好きな稀有な動物ですよね。そして犬にとってそれは特殊なことでも特別なことでもなく、ただただ思うがまま(おそらくは「愛されたい」とさえ考えず)に人間へ愛情を向けてきます。

「愛ってなんだ」と悩む人がいるなら、「犬を飼えばわかります」と、わりと真剣にアドバイスしたい。

 今回は大賞とともに、動物系の作品が優秀でした。「愛」は一般的に非常に人間らしい感情や行為だと理解されていますが、それを表現するには人間以外の動物をモチーフにしたほうが分かりやすいのかもしれません。皮肉な話です。

 話は受賞作に戻って、「彼」は動物に愛され、「彼女」は彼に愛され、「動物」は彼女に愛されと、見事な王道的三角関係が成り立っています。この場合「動物」だけは想いを言葉にできませんから、残り二者のコミュニケーションが活発になるわけですね。

 キャラクターの構図やコマ割りがしっかりと「縦スクロールに特化したマンガ」になっており、大ゴマの見せ方がとても新しく感じました。

 大変続きが気になる作品です。「彼」はなぜ動物に好かれるのでしょうか? 「彼女」はなぜ動物に好かれたいのでしょうか? そして「彼」は「彼女」のことを、どうして好きになったのでしょうか? 

 これまた一般的に、「愛」には理由がなくても成立するものだと理解されています。しかし理由はなくてもキッカケや原因を求めたがったりするもので、それが「物語」を形作るわけで、だからこそ人間の「愛」はやっかいなのかもしれませんね。

 そんなことを考えたくなる作品でした。


(しーげるさん @henshu_shigel コメント)

なぜか動物に好かれる主人公。その主人公が好きな彼女は、動物に興味があって、という不思議な三角関係(?)もの。絵も描き方もとにかく可愛くて癒されます。でも、実際には女の子も主人公に好意がありそうなのに、全然それに気づいてない主人公の残念さ=可愛さがこの作品の1番の魅力。彼がいつどうやって変化の時を迎えるのか。ずっと迎えなくても楽しめるのかもしれませんが、この先も当分ニヤニヤしながら見てみたいと思える作品でした。

公園のベンチという限られたシチュエーションですが、カメラワークも工夫されていて、それも楽しかったです。



最後に、次回の第8回コミチ漫画賞は、

 お題:#関係性

 期間:2020年2月17日〜2/23

です。


キャラクター同士の「関係性」は、マンガの大きな魅力のひとつです。例えば少女マンガでは『男女の関係性』、BLマンガでは『男性同士の関係性』が作品の魅力です。

同じお題で開催した第2回コミチ漫画賞の寸評を読むと、受賞のためのポイントがつかめるかもしれません。

WEB時代ならではのマンガをお待ちしています!



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