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シャープさんさんの作品:夜食考

私の夜は長い。こんばんは。@SHARP_JP です。夜がこんこんと更ける頃に口にする食事、おいしいですよね。真夜中に摂取する食べ物。いわゆる夜食というやつですけど。あの魅力には抗いがたいものがある。


なにかに没頭していたら日付が変わっていた夜。来るべき朝に追い立てられながらジリジリと仕事を進める夜。あるいはビールやハイボールを重ねてご機嫌と少しの後悔をもって帰宅した夜。私たちは唐突に自分の空腹に直面する。


人間の生命活動に必要とされる3食とは別の食事。ここからは過ぎたるものとしての食欲。それが夜食というものでしょう。大人の分別をもってすれば、食べないという選択をすべきものだ。だが私たちは食べる。丑三つ時に食べる。たとえどんなにストイックな人でも、3回に1回はあの深夜の誘惑に打ち克つことができないのではないか。


とにかく夜食はおいしい。食べない方がよいという理性的な判断に背いてまで口にするのだから、ラーメンでもうどんでも、クッキーやチョコレートのかけらでも、炊飯器の奥から発見した冷やご飯ですら、われわれの胃に収まる頃には深い満足感をもたらす。背徳感はスパイスだ。


夜食の魅力はもうひとつある。ひとりで食べることだ。朝昼晩と意義づけられる食事は、どこか正義と社会性を帯びてしまう。健康のための朝食しかり、グルメのためのディナーも、食うという行為に付加価値をもたらす。昼休みという時間が定められた働き方をする者にとっては、だれかとともにするランチなど、社会性を帯びた食事の最たるものだろう。


だが夜食はちがう。夜な夜な食欲に向き合い、ひとりで好きなものを食べる。唯一気兼ねするのは己の理性のみ。他者の目など届かない、自由な食事だ。その開放感と背徳感。夜食は孤食だからこそ、夜に魔力をふりまく。


深夜に小腹が空いた話(Yumiki_Ran 著)



だから夜食はだれかに目撃された瞬間、魔法がとけてしまうのかもしれない。夜食が孤食でなくなった時、開放感と背徳感のバランスが崩壊する。ただただ恥ずかしい行為に成り下がる。このマンガのように、見られてはいけないものなのだ。


そもそも自分ひとりで自分に向き合う行為は、本来から少し恥ずかしいものなのだろう。むき出しの欲求を満たす様は、できれば秘匿しておきたい種類の行動。自らの欲求を覗き込み、自らが欲求を満たそうとする時間は、コソコソがつきまとう。逆に言えば、ばれるリスクがあるからこそ、夜にふさわしいスリルと魅力があるにちがいない。


それにしてもこのマンガを読むと、冷蔵庫のチーズの尊さに気づかされる。私の冷蔵庫に6Pチーズの数ピースが控えている頼もしさ。あの安心感はつい夜が長くなってしまう人にとっては、かけがえのないものだと思う。いま深夜にいる私は、チーズが食べたい。2ピースは食べたい。ついでにカップヌードルのシーフードも食べたい。ひとりでこっそり食べたい。


ここを読むあなたも、そうでしょう?


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