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コミチさんの作品:10月度コミチ漫画賞「#演出力」受賞作品発表!

今年もあと1ヶ月と少しですね。本当に時が経つのは早すぎて、仕事がたまり過ぎているコミチ代表のマンディ@daisakkuです。


さて第5回目のコミチ漫画賞は、46作品が集まりました。いつも投稿頂いている漫画家の皆様、本当にありがとうございます!


演出力は、今までお題として出してきた、『主人公のキャラ』『関係性』『画力』『ストーリーテリング』を組み合わせたクリエーターとしての総合力です。

いつもより少し投稿数が少なめだったのは、難しかったでしょうか??

ぜひご意見をTwitterのDMなどで聞かせて頂けたら幸いです。


それでは、柿内さん・シャープさん・たらればさんの寸評です。

今回も寸評は必見です!


<大賞>

毎日ちゃんとの毎日(5)「かわいそうなママ」/コジママユコ

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(シャープさん @SHARP_JP コメント)

全編に静かな、だけど不穏な空気が滞留する作品でした。作者のコジママユコさんはおそらく最後のコマに向かって、さまざまなテクニックを施そうとされたのでしょう。全体のモノクロな描画もそうですが、母親のコマは背景が暗く描かれ、離婚後の疲弊しきった様子がありありと伝わってくる。別の場所で暮らすことになった兄との会話では、電話越しとはいえ、母に遠慮して抑制してきた主人公の感情が溢れ出す。「いつかママを捨てると思う」という最後のセリフは、母からの離脱を促すクールな兄のアドバイスに影響を受けたというのはかんたんだけど、むしろ電話の前から娘が母親にうっすらと憐れみと嫌悪を抱き続けてきたことが、主人公が母に向ける目線や省略されたコマによって明らかにされ、よりいっそうリアルに、残酷に演出される。マンガなんて描いたことない私ですが、描く人の演出力を見せられた瞬間でした。



(たらればさん @tarareba722コメント)

タイトルである「毎日ちゃん」とは、本作主人公「朝緒」(周囲の子よりも一足早く中二病に罹ったと思っている小学生)の同級生の名前。今回のエントリー作品はシリーズもので、非常に続きが気になっています。

 本作で一番「おお、なるほど」と思ったのは最序盤。自宅内に家族(母親)がいるのに、主人公は無言で家の扉の鍵を開けて入っており、母親から声をかけられるまで無言です(一般的な家庭であれば、帰宅時に家族が家にいるのがわかっていれば、扉を開けた直後に「ただいま」と声をかけるでしょう)。

 最初の数コマで「この家は普通ではない」という雰囲気が伝わってきます。

 また、この「毎日ちゃんとの毎日」のシリーズ第1話での「朝緒」の、どこか達観したような振る舞いや考え方にも合点がいく環境だともいえます。

 前述のように続きが気になる作品なのですが、一点、「朝緒、元気?」の電話のコマ運びのところは、もう少し構成を見直したほうがよかったのではないかなと思いました。

 というのも、「広大から電話」のコマから「お兄ちゃぁん!」まで3コマ。引っ張りたい気持ちはわかるのですが、その効果が分かりづらい。これだったら、兄弟の会話が気になるに決まっている母親が、なぜ電話の内容に聞き耳を立てていないのかの説明(もしくは朝緒がそれを察して自分の部屋で母親に聞かれないよう工夫する描写)が必要だったのではないかと考えます。

 コジマさんは「繊細なしんどさ」をマンガに投影するのが上手いので、主人公だけでなく、周囲のキャラクターの「しんどいゆえにとってしまう行動の描写(たとえば長男が勝手に一人暮らしを始めてしまい、それを捨てられたと感じている母親)」にもぜひ挑戦してみてください。



(柿内さん @kakkyoshifumi コメント)

予定調和を崩すことで、演出の王道である「ギャップ」がうまく描かれている思いました。ヤンキーがゴミを拾うといいやつに見えるし、いつもクールなビューティーがふとした瞬間に笑みを見せると激萌える。かわいそうなママは、「助ける」のではなく、「捨てる」。このギャップ演出を発展させて、毎日ちゃんとの毎日に大きな物語上のカタルシスを生み出してみては。頑張ってください!



<ラリー賞>

研究室部屋おばさん/丸山ミユ

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(シャープさん @SHARP_JP コメント)

なんだろう、うまく説明できないのですが、ちょっとかしこそうなお笑いの人によるコントを見たような気持ちになりました。ひとつずつのセリフやその会話のテンポは、マンガならではの演出とも言えるでしょう。光る石を拾ったら赤ちゃんが生まれたという神話っぽい話が、AIロボットの研究室を舞台にドタバタ繰り広げられる様子がたのしかったです。またラリー(描き直し)によってドタバタの転がり具合が増えていくのも、コント劇の成立を見るようで興味深く拝見しました(描き直す前の作品も公開されています)



(たらればさん @tarareba722 コメント)

「赤ちゃんロボを作っていたのに(起動して)泣き出すのは予想通りではないのか」、「松中さんは毎朝研究室を訪れるのであればもう少し研究内容に詳しいのでは」、「母乳でるのか」など、冷静に読み返すといくつか疑問があるものの、そんなことより続きが気になる、という話でした。これからどうなるんでしょうか。

「いきなり赤ん坊が訪れてドタバタが起こる」という導入は、なにげに日本の物語の鉄板で、「竹取物語」や「桃太郎」もそうだったりします。

 個人的には、赤ん坊は『寄生獣』のような、特殊能力を持った「何か」であってほしいなと思いますし、何か目的意識を持っていてほしいし、さらには(せっかくなので)教授の知識がなんらかの役に立ってほしいなと思います。続きに期待します。



(柿内さん @kakkyoshifumi コメント)

面白い。「研究者×おばさん」という要素の組み合わせが、「赤ちゃん」というトラブルメーカーを不本意に抱えてしまうことで、どう加速していくのか!? 「赤ちゃんに乾杯!」みたいになるのか、「ベビーシッター・アドベンチャー」みたいになるのか、展開に期待。ゼロから考えるのではなく、"ベンチマーク"となる作品があると、考えやすくなるかもしれません。



<新人賞>

桜散る理科実験室の思い出/hassaku

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(シャープさん@SHARP_JPコメント)

今回のコミチ漫画賞のテーマは「演出力」ですから、応募された作品にはそれぞれ、作者が考えるなにがしかに渾身の演出がなされているわけです。演出の結果とは、総合的な表現の末、作品内に立ち上がるものですから、わたしたち読む側にとっては読後の感傷あるいは印象が、作者の演出力を端的に表すはずです。そして私は、この作品で淡いエロティシズムを感じました。いまその余韻に浸っています。みなさんは、どうお感じになったのか、ぜひ聞いてみたい。それにしてもいまの高校生はkindleゆえに、落としたら家の外でも本棚が丸見えになるリスクがあることにあらためて戦慄したし、覗かれた主人公の本が「存在の耐えられない軽さ」だったというのも、細やかなエロティシズムへの演出だな、と思った次第です



(たらればさん @tarareba722コメント)

 今回のコミチ賞は、新人賞が一番選考が難しかったです。本作は『センチメントの季節』を思い出すような切なさを感じる作品でした。

 本棚を見られるのって、下着姿を見られるのと同じくらい恥ずかしいですよね。桜の花びらが落ちて、波紋が広がり、最後の2コマにつながる構成はお見事でした。また「ガラス越し」の絵柄がとても美しく、青春の透明感を描き出す演出として見事でした。

 回想シーンや時間が経過したあとのコマを通常コマと区別しなかった(たとえば枠線を変えるとかコマ間をスミベタにするとか)のは、あえて、でしょうか。一瞬混乱がありました。

 あと数年後のシーンは、何か思いだすキッカケがあったほうがよかったかなとも思います(「唾」つながりだとは思うのですが、やや遠いしあまり美しくないかなと)。たとえばポスターで「あの女子」と似たアイドルを見かけたとか、同窓会のハガキが来たとか、Twitterの「おすすめユーザー」に表示されたとか。



(柿内さん @kakkyoshifumiコメント)

描きたいことをまだ作中で表現しきれていない印象は受けますが、それでも、「友達でも好きな人でもない、でも気になる存在(異性)を描く」という視点は、素晴らしいと思いました。この視点で、引き続き何作か描いてみてもいいかもしれません。



最後に、次回のコミチ漫画賞は、

お題:#縦スク

期間:12/2〜12/8

です。


最近、縦スクロールのマンガがすごく読まれているという話を良く聞きます。

LINEマンガさんの『女神降臨』は、ワンピースを超えて、日本で一番読まれていると言われるマンガだそうです。

インターネット革命が来て、縦スクロールの時代がついに日本にも来ていると思った瞬間でした。


コミチでは、縦スクロールならではの、没入感あるマンガをお待ちしています!



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