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ごとう隼平さんの作品:「かんなびと」/裏海マユ

こんにちは、マンガ制作研究組織「東京ネームタンク」のごとうです。


今回は8月のコミチ漫画賞『#画力』に投稿されたネーム添削の第3回目です。


今回の作品は裏海マユさんの『かんなびと』。

それでは、作品を振り返っていきましょう。


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とても読み応えのあるしっかりとした作品ですね!

商業誌に掲載されていてもおかしくないレベルだと思います。


今回の作品は特にレベルが高いので、プロの漫画家の方に向けてお伝えする、という視点から「売れるにはどうしたらいいか」ということを含めてお話していきたいと思います。


まずこの作品は、強いキャラクターである美人なお姉さんを登場させて、「この人は何なんだろう?」「この物語はどうなっていくんだろう」という”謎”で読者の興味を引くことができていますね。


反対に足りないものは「主人公のしたいこと」です。

基本的に「主人公のしたいこと」が明確に存在してそれが推進力となって進んでいくという構成になっているのがよくある物語のセオリーです。


この作品は「主人公のしたいこと」ではなく「出来事」の魅力で物語を進めていくミステリーの手法で構成されています。


実はこの構成の仕方はとても難しいんです。

難しいにも関わらずここまで読者を引き込む作品にできているのは作者である裏海さんがすごく修行を積んできたからでしょう。


ただ逆に「主人公のしたいこと」をもっと明確に描けば、もっと楽ができるんじゃないかなとも思います。


この作品で「主人公のしたいこと」になるのは、「お姉さんを幽霊よけのためのボディーガードにする」ということですよね。

でもこれはすぐに叶ってしまうことです。


これはあくまでひとつの方法ですが「主人公のしたいこと」を設定して、それがなかなか叶わない状況にすると、もう少し物語が作りやすくなるのかなと思います。


例えば、お姉さんの方からボディーガードをしたいと言ってくる。でも主人公には彼女がいて、お姉さんがそばにいると彼女が嫉妬して怒られるから近づかないでほしい。それでもお姉さんはしつこくボディーガードをすると言ってきて……というような構成にすると、主人公のしたいことである「お姉さんと離れたい」がなかなか叶わない状況になるし、読者には「このお姉さんはどうしてこんなにしつこいんだろう」と興味を引かせることができるわけです。


もちろん、この作品はとてもおもしろいのでこれでよしとして、今後の物語の作り方として「主人公のしたいことがなかなか叶わない」という方法も持っていてもよいと思います。


もう一点は「パッケージ感」についてです。

このレベルまで来た作品であれば、もちろん商業連載を考えていると思います。

そのときにどうすれば「このマンガは商品として、こういう作品だから売れる」と思わせられるか、というお話をしていきたいと思います。


この作品は商業作品として考えるとやや「パッケージ感」が弱いと感じます。

「このマンガは〇〇マンガです」というジャンルを一言で言えないからです。


そもそも「パッケージ感」とは何かというと「このマンガはこういう話なんです」と言っただけで「おもしろそう」と思ってもらえるような「商品としてのまとまり」があるか、ということです。


この作品はどの部分を楽しんだらいいのかというところがまだ絞れると感じます。

例えば、毎回主人公の彼が自殺者の思いを遂げさせるためにがんばる話、というような、このマンガはここを見てほしいんだ、というポイントを作ってほしいなと思います。


絞り方はいろいろあると思いますが、僕がこの作品を読んでいちばんポイントになり得ると思ったのは「幽霊のお姉さんが実は同性愛者である」ということです。


「同性愛者の幽霊が思いを遂げられなくて成仏できない話」というパッケージ感は十分ひとつの企画として通用すると思います。


例えばの話ですが「成仏させるために思いを遂げて告白してほしい主人公」と「成仏はしたいもののどうしても告白できない幽霊」を描いていくとか。


この作品では話の盛り上がりを考えてお姉さんの秘密を最後まで明かさないでとっておいていますが、「同性愛者の幽霊」というところは初めから分かっていて「思いを遂げられなくて成仏できない」というところに盛り上がりを持ってくるのもひとつの手かなと思います。


今回お話した「主人公のしたいこと」と「パッケージ感」は、連載企画を練る上でセットで考えてほしいことです。

連載企画なら「主人公のしたいこと」は基本的にずっと叶わないし、「このマンガは〇〇マンガです」というパッケージ感が大切です。


このあたりをもっと意識すると商業連載の企画として通用する作品になってくると思います。




***




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