マンガの必殺技辞典 あ行  第二語「アイレベル」

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樹崎聖(マンガ技術マンガ『マンガの必殺技辞典』連載中)さんの:マンガの必殺技辞典 あ行  第二語「アイレベル」




「目の高さのこと」という説明だと不十分!その世界を見ている側の人間の目線の高さのことです。 画面にいる主人公の目の高さのことではありません。作者自身の目線アングルです。 もっと解りやすく言えば、映画でいう「カメラ位置の高さ」のこと。だから解りやすく漫画業界でもカ メラ位置ということも多いです。 一点透視法の一点の位置の高さであり、二点透視法の二点と同じ高さにあります。 実は現代マンガでは誰の見た世界だかわからないような神目線はできるだけ使わないのがセオリーとな っています。 それは主人公の目から見た構図で物語に導入することで読者が入りやすい演出となる事が多いからで す。

スマホで気軽に撮った写真を資料にできる事が多くなったのも主人公と同じ目線のアイレベルが現代的 主流の構図となった一因かもしれませんが。

大人になると子供の頃夢見たことが非現実的であることに少しづつ気付いてしまい、夢らしい夢が感じ られなくなるものです。 それを映画でひっくり返してみせたのが映画史上最高のヒットメーカーとなったスティーブン・スピル バーグ。

その代表作の一本でインフレーション調整時のアメリカ国内歴代興行収入第4位となる(つまりこれは実 質近代で最もヒットした映画ということ)「E.T.」は、カメラ位置を徹底して子供目線の高さにすること で、観ている人を...たとえ大人であっても子供心に戻らせる演出に成功し、劇場中を感動の涙で満たし たのでした。

これは魔法のような技術であったと思う。 余談になりますがスピルバーグは出世作となった「激突!」の撮影においても、運転手よりずっと低い 位置にカメラを置く事でスピード感のある演出ができることを発明しています。スポーツカーの着座位 置が押し並べて低いのが、目線が低い事自体がスリリングさを増長させるこということを知っていたの かもしれません。

子供らしい可愛い小さなキャラを描きたいなら、あえてアイレベルを大人目線に位置設定して描く事 で、見下げた位置になる程の小さなキャラクターと感じさせることができます。 逆に子供の等身大の物語としたいならE.T.のように子供達の目線とすればいいわけですね。 怪獣映画は庵野秀明監督の学生時代の傑作「帰って来たウルトラマン」以後、「平成ガメラシリーズ」 「ウルトラマンティガ」「レジェンダリー版ゴジラ」「シン・ゴジラ」と受け継がれ...人間目線を徹底 するカメラワークで怪獣の巨大さを演出し、大人の鑑賞に堪える分野となりました。

近年の漫画では「富士山さんは思春期」が、大柄な少女と小さな男子の恋愛をキャラクター目線を徹底 して取り入れたアイレベルで身長格差恋愛を見事に表現していました。 誰に何を魅せたいのかでアイ・レベルは変わってくるべきものなのです。技術から考えるのではなく、 何を表現したいのか?から必要な技術を考えましょう!

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